第20回<臨時増刊号> 西洋と東洋の出会い~ジョン?レノンの巻|かんがえるジュークボックス/亀山博之

コラム

夏芸大

 9月1日から「山形ビエンナーレ」が始まりました。16日まで、本学そして蔵王温泉を会場にさまざまな催しがあります。ぜひ足をお運びください。

山形ビエンナーレ2024
山形ビエンナーレ2024

 さて、この山形ビエンナーレに先立って開催されている「夏芸大」では、本コラムも「かんがえるジュークボックス講義編」を開講し、英語とロック、“West Meets East”をテーマにお話をさせていただきました。平日にも関わらず貴重な時間を割いて受講してくださったみなさま、本当にありがとうございました。3時間も熱心に耳を傾けてくださって本当に嬉しかったです。

夏芸大「かんがえるジュークボックス講義編」の様子
「かんがえるジュークボックス講義編」の様子

 都合がつかずに参加できなかったという声もあったり、なかったり…とにかく、どんな講義だったのか、今号では本コラムの臨時増刊号としてお届けいたします。受講された方には復習の時間、そして、提出課題の公開の場となります。

講義と演習!

 本学の実際の英語の授業ではどんなことがおこなわれているのか、その一部を垣間見ていただくことと、英語とロックとアートについてかんがえる時間をともに過ごすことが今回の「かんがえるジュークボックス講義編」の趣旨。

夏芸大当日にかけたレコード群
当日にかけたレコード群
シングル盤しか扱わないのが本コラムのルール
なので、LPはあくまでも補助教材

 ザ?ビートルズの曲をアナログレコードで聴き、歌詞の書き取り、そして文法の復習から詩の解釈まで、あれやこれや詰め込んだ3時間でした。そうそう、キーワードはエマソンの“Genius”、ソローの“Simplify”、レノンの“Aisumasen”でしたね。ここ、テストに出ます。
 そして、西洋と東洋とは本当に出会い、理解し合えるのか、エドワード?サイードの『オリエンタリズム(Orientalism)』やジョンとヨーコの「バギズム(Bagism)」の話を交えて考察したりもしました。

ジョン?レノン「ラヴ」日本盤
ジョン?レノン「ラヴ」日本盤

 講義編の後の演習編では、英語俳句の詠み方を身につけました。wabi, sabi, shibumiの精神を体得したジョン?レノンの1970年の曲“Love”を参考にしましたね。

 Love is real, real is love
 愛は真実、真実は愛
 Love is feeling, feeling love
 愛は感じること、愛を感じること
 Love is wanting to be loved
 愛とは、愛されたいと望むこと

 Love is touch, touch is love
 愛は触れること、触れることは愛
 Love is reaching, reaching love
 愛は届くこと、愛に届くこと
 Love is asking to be loved
 愛とは、愛されたいと願うこと

 Love is you, you and me
 愛はあなた、あなたとわたし
 Love is knowing we can be
 愛とは、わたしたちがこの場に二人いられると知ること

 Love is free, free is love
 愛は自由、自由は愛
 Love is living, living love
 愛は生きること、愛を生きること
 Love is needing to be loved
 愛とは愛されたいと求めること

 俳句に通じる簡素で芯のある詩です。そう、”free is love”という一節で連想されるのはガートルード?スタイン(Gertrude Stein)さん。あえての文法破壊をかんがえるべく、スタインさんの薔薇の詩(“Sacred Emily”)も一緒に読みました。
 ジョン?レノンが読んでいたというR.H.ブライス(Blyth)の俳句の本、さらに、音節やリズム、haikuで求められる簡素化についてもかんがえて、haikuを一句詠みました。最後には、詠んでいただいたhaikuをタイプライターで打って提出していただくというアトラクション。なぜタイプライター?いい質問です。タイプライターは創作意欲をかき立てる魔法の道具だからです!

タイプライターでの課題提出
タイプライターでの課題提出

 というわけで、このたびの夏芸大の受講生のみなさまが提出してくださった課題の英語俳句をここに掲載させていただきます。お題は「夏」「芸」「大」のどれかとなっています。

Natsugeidai
Sitting in the classroom
English word dancing in my head    Tsukiusagi

watching fireworks
light up night city
and your profile    tokumei

bedroom light down
hot air still stays
summer night    minoru

downpour
roof sound
breakdown crying    k550spyder

summer has passed
Life has passed
almost nightfall    boar-song

One hot day
Young acorn above
End of summer    山の麓の絵描き

Unique Class
Feel like a student
A day in summer    Kyoko

In summer day
So sleepy
Monday morning    watashi_

I feel Autumn has come
At the section
of Vegetable    Saki Higuchi

The summer festival has come again
High in the sky
Sings of autumn.           Koji Watarai

Cutting the big watermelon into pieces
Big red smelling -
the family smiling my cat as well    mizue

hometown river -
thousands of sparkles of fireworks
adieu, summer holidays      hana

 夏芸大の講義のあの1日を思い出させる、夏の空気の粒子がどのhaikuにも含まれている感じがします。人生のなかの大切なモノをしっかり見つめ、それを英語で表現することで創造的な思考を得る、そんな演習になったと思います。課題の提出、ご参加ありがとうございました。

夏芸大「講義編」参加記念品
「講義編」参加記念品

 というわけで、今回は講義形式の文体でお送りしました。
 そうそう、講義の最後には、参加記念に「かんがえるジュークボックス」ステッカー、そして、全員に異なる詩の引用がタイプされたポストカードを差し上げました。嗚呼、ステッカーが欲しかった!という方は9月21?22日に開催の芸工祭にお越しください!売るほどございます!

 それではまた。次の1曲までごきげんよう。
 Love and Mercy

(文?写真:亀山博之)

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亀山博之(かめやま?ひろゆき)
亀山博之(かめやま?ひろゆき)

1979年山形県生まれ。東北大学国際文化研究科博士課程後期単位取得満期退学。修士(国際文化)。専門は英語教育、19世紀アメリカ文学およびアメリカ文学思想史。

著書に『Companion to English Communication』(2021年)ほか、論文に「エマソンとヒッピーとの共振点―反権威主義と信仰」『ヒッピー世代の先覚者たち』(中山悟視編、2019年)、「『自然』と『人間』へのエマソンの対位法的視点についての考察」(2023年)など。日本ソロー学会第1回新人賞受賞(2021年)。

趣味はピアノ、ジョギング、レコード収集。尊敬する人はJ.S.バッハ。