[優秀賞]
菅原朋晃|Allegoria
宮城県出身
細川貴司ゼミ
2273×1818×40mm アクリル絵具、油彩
細川貴司 准教授 評
「Allegoria」と名付けられた絵画は、作者が展示中に無関心に通り過ぎていく人々を描き、その体験を元に画面上でドラマティックに繰り広げています。登場する人たちは、ハリボテのように継ぎ接ぎされた身体を持ち、中身のない希薄な存在でありながら、それが逆にリアルさを彷彿とさせます。デジタルが身近になってきた情報化社会をアイロニカルに風刺しているかのように、不安的で脆く、剥がれ落ちそうなイメージの無重力な身体表現が映し出されています。
彼の4年間を振り返ると、1年次からコロナ禍により大学生活はリモート授業が多くなり、自宅待機を余儀なくされた学年でした。それでも彼は果敢に制作意欲の熱を冷ますことなく、自己と向き合い、アパートの中で絵筆を握り続けました。2年次の立体から絵画への転換制作では、その手を通して肌で感じるもの、何ができるのかに果敢に挑み、貪欲に制作に勤しんでいた様子を思い出します。現在の表現のキッカケとなったのは、2年の進級制作で題した「半永久のトカゲ」。紙でハリボテにコラージュしたかのようなキッチュな油彩表現でした。彼はどこまで現実をシリアスに受け止めているかは不明ですが、現実の身体性とデジタルにある希薄な存在を敏感に感じとっています。彼は描く虫であり、これまで小さなサイズから大きなサイズまで膨大な量の作品を描いてきました。将来、作家を目指して、彼がその感受性を大切にし、制作の虫として膨大に描き続けることを期待しています。