[優秀賞]
堀越真由|粘菌暮らし
千葉県出身
藤田謙ゼミ
22×98×98~115×110×110 漆、ケヤキ、ミズメザクラ、刻苧
粘菌が人知れずひっそりと根強く存在し生きている姿に、生命力や美しさを感じている。その姿は環境によって形、色、量が変化し続けていく。見るたびに新しい姿の魅力に出会える。毎日の暮らしの中にその魅力や、ついのぞきたくなってしまう面白さ、驚きに出会える機会を作りたいという思いで制作した。普段は気づかない、見過ごしてしまいそうな事に、私は常に何かを見出しながら生きていきたい。
藤田 謙 教授 評
漆芸の技術習得にはとにかく時間が掛かる。天然素材である漆は採取した年や場所によって性質が異なりそれぞれに違った扱い方が必要で中々自分の思い通りにはいかない。
そんな素材を扱う彼女は作品を制作するときにいつも何か「企」のようなものをエネルギーとして進んでいく印象があった。別の言い方をするとコンセプトのようなものだが、思い通りにならない素材と格闘しながら「企」を形にまで仕上げるまでには弛まない努力と強い意志が必要であったと推察できる。
卒業制作でも自分の表現と素材の性質の折り合いを上手く付けていく必要があり、プランの段階では何度もその形状を変化させ、中々定まらず苦悩する毎日を過ごしていた。モチーフである粘菌は人しれずその姿を変え自然界に存在しているが、その存在そのものが彼女の制作スタイルのようにも見える。この作品は素材の実験を繰り返しながら技術を自分の表現にまで昇華させた非常に見応えのある作品である。