寺まちの継承と保存~寺まちらしさ~
諏訪明日香
山形県出身
志村直愛 ゼミ
寺まちとは、寺院が同じ敷地?区画内に、または道路を挟み隣り合った敷地に密集している地域である。現在の住所や町名による括りとは別物である。近年、都市化によって多くの歴史的建築物や景観が失われている。その中でも寺院、寺まちは都市化による影響を受けていないような場所が多いように感じられた。土地の効率的利用からは、寺院の集積は消極的に受け止められてしまうことがその理由としてあげられる。しかし、現代に残っているということは歴史的?文化的観点から見ると非常に価値のあるものだと考えられる。感覚的に、その場所だけ時間の流れが止まっているような寺まちの独特な雰囲気に惹かれた。また、寺まちが歴史的価値のあるものだと市や地域が認識できているのか、寺まちや寺まちらしさを守るための景観?都市の計画は設定されているのか疑問を感じた。本研究では、東北城下の寺まち、特に山形市の寺まちが今日まで明瞭に残っている要因と、これからのまちづくりで何を守らなければならないのか、現代の都市の中での寺まちの役割を明確にし、提示することを目的とする。
調査から、現在も東北城下の各地に寺まちがあり(図1)、現在の住所や町名によるくくりと江戸時代の寺まちとはくくりは違うことがわかった。また、寺まちらしさや雰囲気を形成しているのは建築物や敷地の広大さ、などの物理的要素だけでなく、鐘の音や木魚の叩く音、線香の匂いなどの感覚的要素からも形成されていることがわかった(図2)。本研究の目的から結論づけると、本来の役割は城下防衛であったが、現代の寺まちの役割は歴史的価値の保存と継承であると考えられる(図3)。価値の変化に伴い、保存だけでなく継承も必要である。本堂やお堂などの物は保存、お経を読むことやお墓参りに行くことなどの行動については継承が該当すると考えた。また、空間的な役割として、地域内の緑地の確保、周辺地域一体との調和を図るための基準となる役割があると考える。この寺まちの魅力と価値を保存?継承することが、今後の土地ごとに個性のあるまちづくりに大事なのではないかと考えた。